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(財)ちば県民保健予防財団 角南祐子 妊娠・授乳中の禁酒のすすめ

「酒は百薬の長」という言葉はよく聞きますよね。でもこれはあくまでも適量飲酒(男性で日本酒1合、女性で0.5合以内)の場合を言っているわけで、飲みすぎは脳や肝臓やすい臓など全身の臓器に悪影響を及ぼします。また流産や早産の危険も増します。

たとえば脳への影響についてご紹介してみましょう。アルコールの脳への影響は、まず理性や判断の中枢の新皮質に現れます。理性が失われると本能のコントロールができなくなりますし、判断力も鈍ってきます。普段静かな人がお酒の席で大声でわめいたり、怒りまくったり、女性にからんだりする姿を経験したことがあると思います。

血液中のアルコール濃度がさらに上昇すると運動機能の中枢の小脳に影響がきて、千鳥足状態になります。さらにアルコール濃度が増すと記憶の中枢の海馬というところに影響が及び、飲酒中のことを記憶できないブラックアウト状態になります。

女性は男性より小柄なため、アルコールを分解してくれる肝臓も小さく、アルコールがなかなか分解されません。また女性ホルモンのはたらきでアルコール分解が抑えられています。そのため男性と同じ量のアルコールを飲んでも、男性より長時間体にアルコールが残ってしまいます。

妊娠中は胎盤、授乳中は母乳を通して赤ちゃんの体の中にアルコールが入ってしまいますが、ましてや赤ちゃんは肝臓が未発達ですので、なかなかアルコールは分解されません。

そうすると胎児や乳児の脳の障害や体の発育の遅れや奇形を引き起こす恐れなどが出てきます。具体的には学習能力や記憶障害や低身長、低体重などの発育障害等の形で現れてくる可能性があるわけです。

アルコールは赤ちゃんにとっては「害」以外の何者でもありません。妊娠中に飲酒を繰り返した母親の胎児にアルコールの影響が強く出た場合、胎児性アルコール症候群といって、以下のような特徴を示します。

1.軽度から中等度の知的障害
2.低体重、低身長
3.小頭症、斜視、心房中隔欠損症などの心臓奇形、鳩胸、尿道下裂など
4.顔面の異常

<母胎児性アルコール症候群の顔の特徴>
・目ぶたが短く鼻が低い
・人中(鼻と上唇の間にある縦の溝)がはっきりしない
・上唇がうすい

大事な赤ちゃんにわざわざハンディを与えたいと考えるお母さんはいないと思います。妊娠・授乳中だけでもアルコール摂取をやめましょう。

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