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公益財団法人 日本生産性本部 参事 北浦 正行 母性健康管理への社会的関心の広がり

 いま、女性の活躍推進に社会の関心が集まってきている。本年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」においても、女性の登用を促進するための環境整備として女性活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築とあわせ、仕事と子育ての両立支援の推進などが施策として盛り込まれた。そうした中で注目されるのは、「女性活躍の推進のためには、女性の特性に応じた女性の健康の包括的支援が必要である。」との1文が入ったことである。具体的な内容はまだ明らかではないが、母性健康管理に対する取り組みも、こうした健康対策の重要な柱となることはいうまでもない。

 ワーク・ライフ・バランスの論議というと、出産後の育児休業の取得や職場復帰に重点が置かれがちだが、この問題は妊娠から始まることにもっと注目されてよいだろう。現に、妊娠後に体調がすぐれないために仕事の継続が困難になったり、あるいは出産への影響等を考え、育児休業以前に退職したりする女性は依然として少なくない。とりわけ立ち作業や無理な姿勢での作業などが必要なる仕事では大きな問題になる。これは、製造現場だけではなくサービス関係の現場でも切実な問題となっている。

 今後、ますます就業構造のサービス化が進展し、しかも労働力不足の状況下で女性の活躍が重要な鍵を握るようになってくる中では、この問題は看過できない。現に女性の就業分野は大きく広がってきており、建設作業や旅客・貨物の運送などに携わる女性も増加してきている。営業関係で外勤することや遠距離出張等の機会も増えている。さらに、身体だけでなく精神的に不調を訴える人も少なくないだろう。働き方の変化は、今まで以上に女性の健康管理への配慮を必要とさせることとなる。

 しかし、働く女性のこうした悩みは、本人からはなかなか言い出しにくいし、そのため職場の周囲にも伝わりにくい。こうした理解のなさが、妊娠中の女性に対する非難や中傷となって、相手を傷つけるような言動となる場合も多いという。いわゆるマタニティハラスメントの問題である。労働組合の連合も、その取り組みに乗り出したが、そこでも母性健康管理の周知徹底が重要な政策課題とされている。今回の新成長戦略の展開を契機にして、ワーク・ライフ・バランスの推進や女性活躍の加速化の前提として、母性健康管理が重要な基盤となることがもっとアピールされるよう大いに期待したい。

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